PT2/PT3等のアースソフト、全製品のサポートを終了⋯あの頃の思い出。

 TS抜きチューナーのPT2/PT3等を販売していたアースソフトが2019/04/25、本日で全ての製品のサポート終了します。今回は私があの辺のことに熱中していた頃の話です。
 前回の記事でそこそこアクセスがあったのでたまにチラ裏程度に書いておこうかなと思ったので2本目です。



hoyomemo.hatenadiary.com

2020年5月追記:アクセス解析からPT2とPT3の違いについて調べて辿り着いている人が多く見られるようなのでPT2とPT3の違いについて軽く説明する為の記事を書きました。



earthsoft.jp

 TS抜きチューナーとは、複合されたMPEG-2 TSを暗号化せずに記録する製品で電波産業会(ARIB)が遵守すべき仕様としたARIB運用規定に準拠しないものである。 (wikiより
フリーオ - Wikipedia)

 平べったく言うと、一般的に売られているチューナーは編集やPCでの取扱に制限、コピー制限等がありますがTS抜きチューナーと呼ばれるものはそれがないです。海外サイトなんかに違法にアップロードされているアニメ等は、TS抜きチューナーで.tsファイルを保存してからH.265とかでエンコードしてアップロードしているものがほとんどなのではないでしょうか?知らんけど。

 このTS抜きチューナーの違法性ですが、wikifriioの項目を見て頂いた方がわかりやすいと思います。
 ※friioアースソフトの製品ではありませんが最初の頃有名だったTS抜きチューナーです。

  • ARIBは「不正チューナー」と定義している。
  • 上のことに法的拘束力はない。
  • コピーすることによって著作権侵害になる可能性はある。
  • B-CASカードを改造して不正視聴することは当然違法。


 現状、このTS抜きチューナー自体を取り締まる法律はありません。今後変わる可能性はあります。
 私がこの辺の界隈に興味を示していたのは今から10年ぐらい前の話で、当時中学生でした。

時系列タイムライン

日時 事柄 参考記事等
2007/09/12 PV4発売 争奪戦開始……即終了!アースソフト「PV4」発売も一瞬で完売!
2007/10/25 Friio発売 Friio - デジタルハイビジョンテレビアダプター 「フリーオ」
2008/04/04 Friio発売 ついにBS/CS対応モデルの「フリーオ(ブラック)」が本日より発売開始 - GIGAZINE
2008/10/25 PT1発売 並ぶ!? 地+衛星デジチューナー「PT1」が明日から発売に!
2009/10/02 PT2発売 PT1後継の地デジチューナー「PT2」発売、深夜販売に600人
2010/07/24 TvRock最新版が公開される
2011/10月頃 難視聴対策放送を視聴可能にするファイルが出回る これを使うと地方でも関東5局の放送を視聴することができるようになった。
2011/12/26 NHKがTVTestを使っていることが公開される PT2支援ソフト、TVTestとTvRockがついにNHKに公認される
2012/02/23 GigazineにBLACKCASの記事が掲載される テレビを見まくりな謎のカード「BLACKCASカード」をテレビに挿してみた - GIGAZINE
2012/3月頃 B-CASカードが割られる この頃にDTV板にニュース系の板や他から流入
2012/06/13 PT3発売 地デジチューナー「PT3」発売、PCI Express対応 / 夜間販売に400人超
2012/06/19 平成の龍馬逮捕 B-CAS改造でブロガー「平成の龍馬」逮捕 - ITmedia NEWS
2012/06/30 B-CAS書換プログラムを作成した大学生が朝日新聞に登場する 【速報】B-CAS書き換えプログラムを作成した大学生(18)が朝日新聞に登場 記者の前で実演も
2012/10/01 リッピング違法化 DVDリッピング違法化+私的違法ダウンロード刑罰化法案、衆議院で可決 -INTERNET Watch Watch
2015/2月頃 Kw変更 契約者はそのまま視聴できるが違法視聴者は書換が必要となる。※
2015/06/06 うんコム逮捕 カード使わずTV無料視聴 不正プログラム作成、公開容疑 佐賀市の少年逮捕|行政・社会|佐賀新聞ニュース|佐賀新聞LiVE
2016/04/24 PT3生産終了を発表 アースソフトの地デジチューナー「PT3」が生産終了に (取材中に見つけた○○なもの) - AKIBA PC Hotline!
2019/04/25 アースソフト全製品のサポート終了 アースソフト

※Kwは正規契約者は気にすることはありません。違法視聴者は視聴できなくなりました。
この時、SNSで「見られなくなった」と言っていた人はつまり...


幼少期の環境

 小学生の頃、自分の部屋にテレビはなくリビングは親の仕事等でテレビを自由に見る環境はありませんでした。PCにはずっと興味を持っており、親が以前仕事で使っていたノートPCを弄り回したりはしていました。Windows98です。PCで動画を見られたら良いなあとずっと思っていたのでそこそこのスペックのPCを家族共用でも良いので買って貰えることを願っていました。よくママチャリを走らせ本屋にこの手の雑誌を読みに行っていたのことを覚えています。
 田舎だったので、中学生の頃に携帯電話なんてものは買い与えられておらずガジェットは一切持っていませんでした。ゲーム機も親が反対派だった為、持っていません。(小学生の時に買ってもらったGBAは持っていたけれども流行りのDSやPSPは持っていませんでした)
 インターネット環境と新しいPCを手に入れた私は、今までに溜め込んでいた分ガッツリはまって行きました。それは「動画を見ることが目的」ではなく「動画編集することが目的」になっていきます。DVDレコーダで録画したデータをCPRM解除を行い、PCに取り込み動画エンコードを行うのです。幼稚園児の頃から撮りためたVHSのデータもDVD経由で取り込みました。VHSから直接取り込んだ方が良いというのは分かっていたのですが、いかんせん中学生に数千円はとてつもなく高かったのです。(※CPRM解除を行うことは現在違法化されています。)

白凡(Friio)を手に入れる

 TS抜きチューナーも当然欲しかったのですが当時の私にはとても買える値段ではなく指をくわえて眺めることしかできませんでした。ある日、知人から「○○さんの遺品だけど自分は使わないから貸してあげるよ」と言われ白凡を手に入れます。Friioはその形状が「凡」という字に似ているということから地上派のTS抜きが可能なFriioのことを白凡と呼んでいました。○○さんは、私も知っている方で自殺したということを聞いていたのでその時の私は喜ぶことができずに複雑な気持ちで白凡を受け取ることになります。
 周囲に色々聞きながら環境を整えて.tsファイルからの動画エンコードの方法を調べていきました。TV局のロゴを消去したり、自動化、ツールを私向けに作って頂いたりしてとにかく楽しかったです。周囲の大人も優しかった。
 白凡はその後壊れてしまったのですが「返さなくていいよ」と言われました。まあ、ずっと気にしていた私は高校の卒業旅行で買って来たお土産を知人に送り謝りました。非常に申し訳ないという気持ちでいっぱいでしたね。

PT2の購入まで

 PT1の頃からアースソフトの製品が欲しかったのですがPV4は発売から数年経っても定価の倍以上の価格で取引されていました。PT1も高かったし、PT2も滅茶苦茶高かったです。高校生になってアルバイト等で貯めたお金でPT2ぐらいは買えるぐらいになった頃、PT2の入荷の情報を聞いた私は購入を決めました。地元のPCショップで定価より少し高い値段でした。その入荷の後、再度相場は上がりましたね。あの時のワクワクは子供の頃にクリスマスの朝にサンタさんがプレゼントを持ってくるのを楽しみにしていた時のようでした。
 余談ですがこの手のTS抜きチューナーとてつもなく人気商品だった為、秋葉原に並んで転売するというのが横行していたようで当時はかなり儲かったそうです。これはその時の周囲の人間からではなく別界隈で知り合った方から聞きました。
 

その頃のアニメ事情と受信環境

 スマートフォンの普及等もあり今では公式による動画配信が様々なところからされて容易にアニメやドラマを見る環境ができましたが、当時はそういったものはなく地方民はBSやCSの放送を待つか違法アップロードに頼るしかありませんでした。当時の私は九州に住んでおり、関東・関西に住んでいる人羨ましいなあと思っていました。今と違って、BS-TBSやBSフジの放送も地上波放送から1ヶ月以上も遅れていました。AT-Xもアニメ視聴の為に親に契約してもらいお金は小遣い等から払っていました。Twitterでは実況民からのネタバレを食らっていました。「関東にサーバーがあればなあ」そう思うようになります。

 数年して私自身が関西圏に引っ越すことになりサンテレビKBS京都の両方を受信できる場所を視野に物件を探しました。枚方市付近を考えていましたが結局、サンテレビの受信できない京都市内へと引っ越しました。
 実家の方も引っ越しがあり福岡県の5局と山口県の3局+NHKが受信できるように、関東の方も東京MXとテレビ神奈川を受信できる場所へとサーバーを設置しました。こうして関東5局+独立2局+関西5局+KBS+福岡5局+山口3局を受信可能とする環境を構築しました。中学生の頃にみた夢のような環境です。

B-CASカードクラック騒動

 兼ねてからB-CASカードを販売するB-CAS社は天下り先ではないか?ペーパーカンパニーである等の意見がありました。このB-CASさえなければ自由に扱うことができるのにと思うユーザーも多かったのではないかと思います。B-CAS不要で視聴可能となるBLACKCASの登場等からエスカレートしていきます。BLACKCASはCSの有料チャンネル等も無料で視聴できてしまうというものでした。これはユーザーにとっては魅力的なものかもしれませんが、当然有料のものをタダ見する行為は良いわけがありません。その後クラックされ、掲示板を中心に有料チャンネルがタダ見し放題という話が拡がっていきます。スレッドにはインターネットのあちこちから人が流入し盛り上がっていきました。TS抜きチューナーがあればB-CASカードがなくても有料チャンネルが見られるツールが出回り、B-CASカードを書き換えることによって一般家庭のテレビでも有料チャンネルを無料で視聴できるようにするツールを配布する者も現れました。(配布した「平成の龍馬」は後に逮捕)
 その頃、DTV板には他から流入して来た人で荒れていました。そういったこともあり私はその辺のスレッドを見るのをやめていきました。当時、書換時に使うNTTのICカードリーダーが定価の何倍もの値段になり取引されていたのを覚えています。品切れも続出していました。当然ですが、この書換行為は違法であり逮捕事例も数件あります。
 DTV関連のツールのうpろだの関係者やその界隈の有識者達が違法視聴を助長していたわけでもないのに家宅捜索を受けた等のきな臭い話で溢れていきます。サイトは閉鎖されたりツールが非公開になったりしていきました。

公式による動画配信の普及

 前述したように以前と違い今日では公式による動画配信サービスが当たり前になっています。スマートフォンも普及し、誰もが簡単に動画を見ることができます。私も自宅のSpinelが不調で録画サーバーから母艦PCで録画データが見られなくなっていた時に再設定が面倒だからという理由からdアニメストアTVer等のサービスを使い始めましたが、自宅にいる時間も以前より減っており今ではインターネットが接続可能であれば簡単に視聴できる動画配信サービスに頼りきりになっています。PT2もPT3も最近はあまり利用していません。そもそもダラダラとテレビを見る習慣もないので見たい物が見られればいいやという欲を満たしてくれる動画配信サービスで間に合っています。



 Spinelで他のPCから配信してテレビ線がない部屋でもテレビを見る環境を作ったり、膨大な.tsファイルを.mp4に変換してロゴを消去したりしてどれだけ綺麗に動画を編集できるかとか、携帯動画変換君を使ってiPod touchに動画を入れて持ち運んだりと自己満足の世界でしたがとても楽しかったです。遠距離受信等にも興味があり、自分は試すことなく終わってしまいましたが実際に遠距離受信をしている人の情報を眺めるのも好きでした。
 NHKがこういったTS抜きチューナーを利用していることも興味深く心が躍りました。



 次に引っ越しをした時は、普通にテレビを買うかもしれません。今ではもうその辺の情報をほとんど追っていませんが、アースソフトの製品は私の青春の1ページでした。